2013年10月19日土曜日

翻訳のこと on translation

たぶん20才ぐらいまではもうほんと、英語の授業の英文和訳がすごおく嫌いでした。いや、苦手といったほうがいいかもしれません。英語を日本語にしようとしてるのに、英語の構造にひっぱられちゃって、日本語のようなそうでないようなへんてこりんな文章になってしまうこと多々。

英会話も日本語で考えて英語にしよう、なんて思ってるうちはあんまりしゃべれなくて、日→英の回路というんでしょうか、日本語で考えて英語に直すっていうのを全くあきらめて、英語で物事を体験して、英語を聴き、英語を話す、っていう風に、英語な体験を重ねていくうちに、ある程度は話せるようになりましたし、英語でメールとか論文とか、書く方もできるようにすこしずつなっていきました。

しかしそれでもなお苦手だったのが、日本語と英語をいったりきたりすることで、自分で書いた日本語の小説をオーストラリア人の友達に手伝ってもらいながら英語に書き直してみたら、まったく別の小説になってしまう、だとか、英語で書いた論文を、博士論文の中にいれるために、日本語に直す、という作業をしようとしたら、内容は世界中の誰よりもわかってるはずだったのに(!)なかなか日本語になおせず苦労しました。

とまあ、翻訳が苦手なわたしは、翻訳文学も大人になってからはそんなに読まなかったのですが、唯一すうっと読めて大好きになった翻訳家さんと作家さんがいて、それは柴田元幸さん訳のポール・オースター(Paul Auster)の作品群でした。

オースターの小説は当時バイトしてた図書館にずらっと並んでいたので、順にどんどん借りて読んでリクエストもして(職権乱用?笑)『孤独の発明(The Invention of Solitude)』、『シティ・オブ・グラス(City of Glass)』、『幽霊たち(Ghosts)』『鍵のかかった部屋(The Locked Room)』、『最後の物たちの国で(In The Country of Last Things)』『ムーン・パレス(Moon Palace)』『偶然の音楽(The Music of Chance)』『リヴァイアサン(Leviathan)』と読んでいったところ、同じオースター作品でも何か明らかに違っていたのが、『シティ・オブ・グラス』で、なんで?とあらためて翻訳者の名前を確認すると、この本だけが、柴田元幸さんじゃない人の翻訳で、ここではじめてわたしは、翻訳者という裏方的なお仕事のチカラというか、影響力を感じたのでした(現在では柴田元幸訳で『ガラスの街』という本が出ています)。

そんな「翻訳家さんてすごいんだ!」と感じさせてくれた柴田元幸さんが新しい雑誌「MONKEY」を創刊、しかも特集は「青春のポール・オースター」(!)と知り早速入手。大事に読もう、オースターはわたしにとっても青春だあ、と思っていた矢先に、友達からのメールで、柴田元幸さんが絵本作家のきたむらさとしという人と金沢でトークショーをする!と知り、もううっきゃーな感じで、行ってきたのが先週の日曜日のこと。

トークショーは柴田さんによるきたむらさとし氏の作品紹介にはじまり、翻訳と文章から絵を描くことを比較するようなお話、柴田さんが物語を朗読して、きたむらさんが即興で絵を描き、その次は別の話を柴田さんが朗読して、参加者全員が絵を描き、それを最後に講評して、というなかなか刺激的な2時間でした。

トークの中で印象に残ったのは、柴田さんがいい翻訳、だと思うのは「いろんな読みの可能性をじゃましない訳」「多岐的な訳」「ニュートラルな訳」だ、という言葉でした。で、質疑応答の時間に、そういう翻訳をするには、どういう心構えでいたらいいのか、と質問してみたところ、「翻訳はボトムアップな仕事であり、何も考えない訳がいい。そのためには、文法的知識が必要」というような答えが返ってきました。

「無心」って、とても職人チック。そして今のわたしは英語を訳そうとすると、文法はもちろん、単語の意味もあーでもない、こーでもないと考えてしまうのですが、それってまだまだ翻訳の基礎体力がないってことなんだろうなあ、と理解。

そして、トーク後のサイン会には『翻訳教室』と『Monkey』を手にもって、どっちにサインしてもらおうか迷いながら臨んだところ、『Monkey』を見た柴田さんはなんだか嬉しそうで、かわいいサインをしてくれた後に、「誤植があるんだ」とぱぱっとp.30を開いて「<い」と書き込み、唖然とするわたしをみて、「乾くまで時間がかかるからね」とひとこと。

翻訳職人、なれるものならなってみたいです。そのためにも、言葉の基礎体力、しっかりつけよう。



東大の授業を書籍化したまさに「翻訳教室」体験ができる本。難しすぎて真ん中ぐらいで止まってしまってましたが、サインもいただいたことだし、がんばりたいと思います。ちなみに、柴田さんに「難しすぎます」と言ったら「すいません」と謝られました。笑

2013年10月6日日曜日

リヨンのネットカフェにて at an internet cafe in Lyon

近頃はよく、真珠のイヤリングをつけています。かなり前に母からもらったもので、約10年前、フランスのリヨンに滞在してた時もよくつけてました。

アクセサリーは自分を飾るものでもありますが、プレゼントされたものは時に、お守り的な役目を果たします。フランス語が流暢なわけでもないのに、ひとりであちこち動きまわって、初対面の人と話すこともたくさんあって、しかも面と向かって日本語を話す相手が全くいなかった当時のわたしにとって、母からのイヤリングは孤独をなぐさめてくれる何かでもありました。

と、大事につけていたイヤリングだったのですが、アパルトマンの近くのネットカフェで、ぽろっと真珠がとれてしまったことがあります。するとそれに気づいたカフェのマスターがなんと「なおしてあげるよ」と接着剤をとりだして、ちゃちゃっと器用に直してくれてしまい、嬉しいやら、ありがたいやら。もう心から"merci"な気持ちに。

それまではその場所に行っても、"bonjour! un café, s'il vous plaît."と"merci beaucoup."ぐらいしか話してなかったのが、そのことをきっかけにだだーっとマスターに話かけられるようになりました。しかし悲しいかなフランス語があんまり聴き取れないわたしはなんとなくしか話の内容が理解できず、無念。

この真珠のイヤリング、日本に帰ってきてからシルバーの部分をクリーニングをしていまだに使っています。たぶん、プレゼントされた時から数えると、通算で15年とか20年とかつけてるんじゃないかな?で、今はこれを眺めると、リヨンのネットカフェのマスターのことを思い出すのでした。残念ながら話はあんまりできなかったけど、イヤリングはあそこで一回修理されちゃったんだなあと。

そしてマスターの話を理解したかったのにわからなかったあの無念な感じ、今でもそしてこれからも、フランス語を学ぶ上でのいいモティベーションになってくれそう。

2013年10月3日木曜日

パリでは英語?それともフランス語? English or French, which language do you speak in Paris?

春と秋はNHKの語学番組の区切りの時期でもあって、新しい言語、はじめる方も多いのではないでしょうか?

わたしはといえば、秋の訪れとともにフランス語が気になり、ショコラのpodcastを聴いてみたり、NHKのテレビでフランス語を観てみたり、とゆるくはじめています。

フランスはこれまで計4ヶ月は滞在してたのに「英語もそこそこ通じるから英語でいいや…」と英語を話してくれる人には英語を話してもらってなんとか生活してました。約10年ほど前のことですが、一応、観光都市でもあるリヨンにいたので、それほど不便はなく、唯一困るのは食材の買い出しの時で、スーパーでラベルを見て食材を選んだり、マルシェで注文するときには事前にフランス語名を調べてメモを作ったりなどしていました。

そんな中、パリにも数回行ってみたのですが、さすが首都なだけあって、リヨン以上に英語が通じるし、日本人もいるし、ここだとフランス語要らないよね、という気持ちに。しかし、重要な待ち合わせの前に地下鉄を乗り間違え、急遽タクシーをつかまえて、「大急ぎでお願いします!」と運転手さんにも、何の迷いもなく英語で話しかけていたら、言われちゃいました。「せっかくフランスにいるんだから、フランス語を話しなさい。」

「えー、でもフランス語下手なんです!」と主張してみたのですが、なんだか運転手さんのペースにのせられて会話をフランス語にスイッチ。すると、あれれ、わたしフランス語話してるよ、ん、思ってたより話せるのかしら?という不思議な境地に。ちょっと恥ずかしそうに、その運転手さんはお子さんが実は北米に住んでる、なんていう話までしてくれて、あ、だからこの人は英語とフランス語のバランスが絶妙なんだなあ、と思ったのでした。

その時の行き先はフランスの日本大使館。パリの凱旋門近くにあります。凱旋門は有名な観光地だったりしますが、わたしにとってはあのタクシーの運転手さんと話をしてた時にみえた景色。以来、写真などで凱旋門をみるたびに、あの運転手さんのことを思い出して「フランスではフランス語で。」と思います。

フランスにもグローバル化の波が押し寄せて、以前よりも英語を話す人、きっと多くなってると思いますが、だからこそ、またフランスに行ったらすこしでもフランス語、話せたらいいな。

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