2014年2月10日月曜日

英語版『かえるくん、東京を救う』をすこし訳してみた。 translated a part of "Super-Frog Saves Tokyo" into Japanese

ここ数日、東京といえば大雪や都知事選の話題がとびかっていましたが、わたし個人は村上春樹の『かえるくん、東京を救う』の英語版、"Super-Frog Saves Tokyo"を日本語訳しながら、「かえるくん」のことを一心に考えていました。

というのはそう、例の『翻訳教室』の課題です。以前にも書いた気がしますが、これは東大の柴田元幸さんの授業をそのままテキスト化した本で、課題文はもちろん、それについての授業参加者たちの議論も疑似体験できるすぐれ本。独学だけど授業に参加してるような感じでなかなかたのしいです。

一昨年の秋にわりと真面目にこの本に取り組んでみたのですが、翻訳の楽しさ以前に英語力が足りないことを痛感して路線変更。まずもうちょっと英語のインプットをと、昨年はTOEICで基本的なところを、英語耳やフォニックスで音の感覚をトレーニングしてみました。

その甲斐あってか、ハードルがすこし低くなったというか、訳す際に立ち止まる時間が減ったよう。でもまだ英文法で怪しいところはあるし、ボキャブラリーが足りない。何より、日本語の語感と英語の語感の対応関係の感覚が足りない。

などなど、柴田さんがいう「考えずに訳せる」境地にはまだまだですが、今回のこの課題では翻訳、特に小説を翻訳する面白さを深く実感できました。なんというか、物語をただ読むよりもずっと深く物語の中にはいれる感じ。

日本語の小説、特に、村上春樹の小説は、するするっと読めてしまうので、それを書いた人のちょっとした言葉づかいをいちいちチェックするなんてことはしませんが、英訳された文章を読んでそれを日本語に訳し、さらに原文の日本語と比べてみると、英訳した人の工夫がみえてきてすごく面白いです。言葉だけでなく、生活習慣による違いへの訳者の気遣いがみえてきてへえ。

例えば。仕事から帰ってスーパーで買い物してからアパートの部屋に戻った主人公。部屋の中には「かえるくん」がいるので、玄関口で呆然。なかなか靴を脱ぐことができないのですが、そもそも日本の玄関口とアメリカやイギリスの玄関は違うというか、靴を脱ぐか脱がないかの違いがあるわけで、そこをふまえて英訳者、Jay Rubinさんは一工夫。日本語の原文では単に「床」とあるところが、英訳版では"the raised wooden floor"と、ちょっと説明的になってます。

さらに、原文では単に「野菜」とあるのが、英訳では"fresh vegetables"となってたところについては、アメリカで単に"vegetables"だと、冷凍だったり切ってあったりする可能性もあるから、とあって、これもへえ!やっぱり翻訳って現地の事情を知ってるかどうかも大事だなあと思ったのでした。

それにしてもこの授業、途中で訳者のJay Rubinさんがはいってきて議論に加わるし、さらにその後は村上春樹氏まで登場!なんとも豪華です。


翻訳教室 柴田元幸

After the Quake: Stories (Vintage International (eBook)) Haruki Murakami

2014年2月8日土曜日

多言語を学ぶ learning several languages

昨年前半はTOEIC対策な英語を、後半はゆるりとフランス語を勉強してみました。

で、今年はどうしようかな、語学を仕事につなげれたらいいな、と思っていたところ、その気持ちをそのままタイトルにした本を見つけたので読んでみました。猪浦道夫著『語学で身を立てる』です。

発行年は2003年なので、語学業界を知る本としては古いかなと思いますが、心構え的にはとてもよい本で学習意欲が湧きました。

さて。著者は語学力を活かした仕事をしていくための目標設定として、次の3つの職業分類を考え、自分がどれに該当するかを考えることから始めるように勧めています。

  1. 語学の専門家になる(スペシャリスト・コース)
  2. 会社に勤めて組織の中で語学力を武器にする(ビジネスマン・コース)
  3. 語学力を武器にして自分でビジネスを開く(企業家コース)

わたしの場合は現在、分類1の語学の専門家を志望。具体的には、翻訳家、通訳やガイド、語学教師の3つが代表的だそうですが、ライフスタイルや性格的なことを考えると、翻訳家がいちばん向いている気がしています。といっても、「翻訳でもやろうかと…」なんて軽い気持ちじゃだめだよ、と、繰り返しこの本には書いてあって、気がひきしまりました。

ところで、英語を勉強していても、フランス語をはじめとして他の言語も気になるわたし。まるで浮気をしてるような気持ちになったりすることもあるのですが、この著者はむしろそうした多言語アプローチをすすめています。特に英語を理解するためには、むしろそれが言語の基本を知ることになって、いいかも、なんて気にもなりました。
友人の英語の専門家B氏は英語を究めるため、英語の学習に役立つことならなんでも時間を惜しまず勉強しました。その結果、言語学的にいって世にも稀な折衷言語である英語を究めようと努力しているうち、皮肉なことに、英語の骨組みをなしているドイツ語、オランダ語(オランダ語は英語の直接の祖先となっている低地ドイツ語の現代語版で、現代低地ドイツ語といえる。現代ドイツ語は高地ドイツ語から来ている)、そして中世に大きな影響を与えた北欧語(特にデンマーク語とノルウェー語)、さらに英語の語彙の六十パーセントをもたらしたフランス語、学術語の背景になっているラテン語、ギリシャ語のほか、古代北欧語ともいえる現代アイスランド語、ついには、英語の詩を理解するには不可欠だといってアイルランド語やウェールズ語までかじることになり、結局、実質的には多言語学習型の人間になってしまっていたのでした。(p.74-75)
たしかに昨年、英語の語源を調べていると、フランス語やラテン語にいきあたることがしばしば。フランス語と英語はよく似ているので、同時にやると、頭の中がごちゃごちゃするのですが、今年はフランス語を真面目にやって、それを打破できればいいな、と思っています。

そして昨年はTOEIC対策という、英語を英語でざっくり理解する系の学習をしてみたのですが、今年はむしろ日本語を大事にして、英→日、日→英と、いったりきたりできる回路が頭の中にできるといいなあと。

あと、余力があれば、北欧語をやってみて、北欧語で書かれた編み物の本を読めるようになったらいいなあ、と夢想中。さてさてどこまで進めることやら、一年後の自分に期待!?笑

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