ちびちびと続けてきた『翻訳教室』、とうとう最後の課題になってしまいました。レベッカ・ブラウンの『若かった日々』という本の中から、"Heaven"。
「私」の想像する天国は二つあって、ひとつには女性が、もうひとつには男性が登場。で、実はこの二人は「私」の両親の若い頃の姿で、と、シンプルな文章で情景と人物の描写が続きます。そして最後に「私」の願いが仮定法で語られて終わり。シンプルな文章が口語的に続いた場合、そのリズム感も含めてどう訳すのかを考えさせられ、で、仮定法の日本語訳は難しいなあ、と実感したところで終わりました。
難しい単語は全く出て来ないし、文法的にも単純で、英語のままただ読むんだったら読み流してしまいそうな文章ですが、翻訳してみると、ぐっと味わいが出て来るし、あれこれ工夫のしがいがあるんだよ、と教えられた感じです。翻訳は英語の理解だけでなくて、日本語力だというのも、『翻訳教室』の課題をこなすにつれ、身にしみてよくわかるようになりました。こういう時、日本語だとなんていうんだろう、なんていうのが一般的なんだろう、と、よく考えるようになりました。
それと同時に、こういう場合、英語だと他にどんな表現があるのかな、とか、あえてこの表現を選んだ理由は何なんだろうなあ?と考えるようにもなりました。そのあたりの連想がすっと出て来るようになると、英文の特徴を活かした日本語文になるんだろうなあと。
とまあ、今回は、『翻訳教室』終わっちゃう!、というややセンチメンタルな気持ちがまさってしまい、レベッカ・ブラウンの文章にはいまひとつ入り込めなかった感があります。でもこの、読んでても水のようにすーっと通り抜けていってしまうのが、この人の文章の特徴なのかも。ちなみに、柴田先生のレベッカ・ブラウン紹介文は次のようになってます。
レベッカ・ブラウン Rebecca Brown (1956-)
男女間・女女間の烈しい愛を幻想的に描いた作品にせよ、エイズ患者や自身の母の看護体験に根ざした作品にせよ、ほとんど呪文のようにシンプルな文章で読み手を魅了する作家。作品にAnnie Oakley's Girl(City Lights, 1993)など;邦訳に『体の贈り物』(柴田元幸訳、新潮文庫)など。
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