2013年2月28日木曜日

グロービッシュ単語をロングマン英語コーパスで分析してみた。 An analysis of globish words with Longman's English corpus.

「グロービッシュ」の1500語ってどんな単語なのかしら?とつらつら考えていたら、いま手元に『ロングマン英和辞典』があることを 、そしてこの辞書は「ナチュラルな英語」を示そうとあれこれ工夫してあることを思い出しました。

この辞書の特徴はまず、膨大な量(具体的には3億3000万語)のアメリカ・イギリス英語の書き言葉と話し言葉のデータベース、ロングマン英語コーパス、に基づいていることです。単に英単語の意味を日本語で解説するのではなくて、現代の英語によく登場する単語はぱっとみて目立つように示してあり、単語の意味もよく使われる順に並べて示してあります。さらには各単語が、話し言葉や書き言葉でどれくらいの頻度で登場するのかを、S1やW2といった記号で示してあります。

S1と記された単語は話し言葉の英語で最も頻度が高い1000語の1つということだそうで、同様にW2は書き言葉の英語で最も頻度が高い1000語の1つだということだそう。とまあ、この辞書では、話し言葉についてはS1からS3、書き言葉についてはW1からW3まで、つまりは話し言葉と書き言葉それぞれについて、高頻出の3000語を教えてくれてるわけです。

さて、グロービッシュの1500語はこの、高頻出3000語の中に入っているのでしょうか?『ロングマン英和辞典』によれば、
日々使われている英語の86%は話し言葉、書き言葉の両方でもっとも頻繁に用いられる3000語によって占められています。
とのこと。いまや世界で英語(らしきもの)を使ってコミュニケーションしてる人々の全体からみれば、英語を母国語としてる人は少数派かもしれませんが、そんな「ナチュラルな英語」を目指して勉強してる学習者は少なくないだろうし、だったらこの高頻出3000語の上位1500語をグローバル英語の出発点にしたらどうかしら、グロービッシュはそうなってるのかなあ?と気になって調べてみました。ひとつひとつ、辞書をめくって…。



図1. グロービッシュ単語のロングマン英語コーパスにおける頻度。
左は話し言葉、右は書き言葉について。

で、結果は上の図のとおりです。ざっくり言えば、グロービッシュ1500語は、ロングマン英語コーパスの高頻出3000語の中にすっぽりおさまっているわけではありませんでした。私自身、はじめてみた単語もちらほら。

がしかし、上の図でもわかるとおり、グロービッシュ単語の約8割は、話し言葉、書き言葉ともに高頻出3000語(S1-S3およびW1-W3)と一致しているわけで、それをこの、高頻度語重視な『ロングマン英和辞典』であらためて眺めてみると、相当豊かな言語世界というか、これだけの単語があればいろんなことが言えるし、書ける、ということが実感としてよくわかったのでした。それはもうしみじみと。


ロングマン英和辞典

Geoffrey Leech 桐原書店 2007-02-07
売り上げランキング : 55498
by ヨメレバ

関連リンク
Globish Dictionary - Globish.com
グロービッシュ単語1500語はここで確認できます。



2013年2月17日日曜日

オバマさんの勝利演説とグロービッシュ。 Is Obama's victory speech close to globish?



TOEIC Test プラス・マガジンの1月号をぱらぱら眺めていたら、昨年11月にテレビで観てた、オバマ大統領の勝利演説の一部が教材として載っていました。オバマさんはその外見だけで、多様化するアメリカの象徴のような人だけれど、お父さんがケニア出身でお母さんがアメリカ人、育ったのはハワイで、お母さんの再婚相手はインドネシア人、6歳から10歳まではインドネシアに滞在、というその生まれと育ち(Wikipediaを参考)からすると、幼少期から多様な言語環境にいた、と言えそうな人です。

そんなオバマさんのスピーチはかなりグロービッシュ度が高いかも?と気になったので、まずは単語について調べてみました。さて、オバマさんの勝利演説はグロービッシュ単語と非グロービッシュ単語をどんな割合で使っているんでしょう?

というわけで、グロービッシュの公式サイトにある、グロービッシュチェッカー(globish text scanner)(文章を入力してボタンを押すと非グロービッシュ単語が赤字で表示される)に、こちらに掲載されていた勝利演説全文(ただし、オバマさん以外の人の言葉や拍手などはのぞく)を入力、ちまちまと地道に赤色で表示される単語を記録して数えてみたところ、159単語でした(重複をふくむ)。一方、演説全文はテキストエディタで語数を数えてみたところ、2157単語(こちらも重複を含みます)。つまり、オバマさんのこの演説は、単語だけでみれば、約93%がグロービッシュ単語、約7%が非グロービッシュ単語という結果になりました。

さらに、非グロービッシュとなった単語をみてみると、"president(大統領)"や"election(選挙)"など、このスピーチにとって主要キーワードとなる単語がはいってますし、当然何度も繰り返されてます。グロービッシュを国際会議に使おうとする場合を考えてみると、おそらくはその会議のテーマにかかわる主要キーワードがあって、それらはグロービッシュ単語じゃないってことが少なくないんじゃないかと思いますが(一般には専門用語とされる単語が多いかも)、少なくともその会議においてはみんなが知ってて当然な単語なわけで、つまりは、(グロービッシュ)+(非グロービッシュだけどその場では高頻度な単語)、という単語構成がわかりやすいスピーチなのかも、と考えさせられました。

実はさらに(蛇足かもと思いつつ)、この演説に登場する非グロービッシュ単語が日本人(一般的な日本の英語教育を受けた人)にとってどのくらいの「難しさ」なのか定量的につかめたらいいなあと思い、ひとつひとつweblioに入力してみては、学習レベルの目安(検索結果のページの右なかほどに表示されます)を調べてみました。

結果をざっくりいうと、高校卒業までに習うと思われる単語が約7割。日本の高校生がこのスピーチを読んで、わからない単語が出て来たから辞書を使って調べたとしても、そんなものすごい数にはならなさそうです。

などとさんざん分析してしまいましたが、あらためて読むと美しくも力強いスピーチです。スピーチの達人が素晴らしい大統領とは限らないのでしょうが、少なくともこのスピーチで希望を感じた人は多いはず。

ちなみに、このスピーチの最重要キーワード、"forward”はグロービッシュ単語であり、日本の中学生でも知ってる可能性が高い言葉です。その点でも、オバマさんの勝利演説はグロービッシュ度が高いといえそう。


関連リンク
バラク・オバマ米大統領、再選のスピーチ 全文和訳 (goo ニュース)
バラク・オバマ米大統領、再選のスピーチ 英語全文 (goo ニュース)


2013年2月11日月曜日

グロービッシュって何? What is globish?

半年ほど前、書店の語学関連書籍コーナーで「グロービッシュ(globish)」という言葉がタイトルに入ってる本を見つけた。英語(english)をそんなに頑張って勉強しなくても、1500単語のシンプルな表現(globish)でいいじゃないか、ということかしらん、確かにそうかも、ふんふんふん、とちらっと中身をみただけで分かったような気持ちになってそれ以上は調べずにいた。

が、最近、TOEICの模擬テストをやってみて、英語の発音が何カ国かの英語に対応していたこと(米国・英国・カナダ・オーストラリア(ニュージーランドを含む))をきっかけに、英語自体がおそらくは変化しながらものすごくたくさんの人々に使われるようになってきているのかも、と思った。TOEICの4つのバリエーションなんて、たぶんいまや世界で話されている英語のごく一部なんじゃないだろうか。わたし自身、これまで経験した、英語(らしきもの)の会話相手は、上の4つの国の人に加え、圧倒的にフランス語とドイツ語を母国語とする人が多い。自分の英語の語彙はそんなに豊富じゃないのを自覚していたので、なるべくシンプルな表現を心がけて話していた。場合によってはフランス語やドイツ語を使い、必要なら英語を使う。要は伝わればいいというスタンスだった。

つまり、わたしが英語(らしきもの)と思いつつ使ってたのは、英語を母国語としない人同士での言葉である。あれって、もしかしたらグロービッシュだったのかも?と思いつつ、グロービッシュについてwikipeidaをみてみると、提唱者はジャン=ポール・ネリエールというフランス人と書いてある。さらに調べてみると、公式サイトがあった。

トップページには、提唱者ジャン=ポール・ネリエール氏がグロービッシュの成り立ちを説明した動画があり、その内容を書き記したPDFへのリンクが貼ってある。注目すべき(?)は、彼の言葉はやさしい単語しか使ってない。発音は、フランス人の英語に慣れてたつもりのわたしにも分かりにくかった。ともあれ彼によれば、グロービッシュの特徴は以下の4つである。
  1. 1500のよく使われる英単語
  2. シンプルな文章構造
  3. イディオムは使わない
  4. ジョークを使わない
具体的にどういう感じかしら?とサイトをよくみると、グロービッシュの単語リストに加えて、文章を読み込んでグロービッシュ単語を使っているかどうかチェックしてくれるサービスがあったので利用してみた。まずは、このブログの最初の記事タイトルに添えてある英文、"It's not so bad reading slowly."は、合格。でも、次の"study languages with movies"は、"movies"が赤で表示された。そういえば、"movie"はアメリカ英語で、イギリス英語だと"film"、他には"motion picture"って表現もあるよね、と辞書をひきつつ、フランス語ではどうだっけ、と和仏辞典の小さいので調べてみると、フランス語の映画は、"cinema"であり、映画作品は"film"である。ってことはもしかして、と、"movies"のところを"films"にしてみると、合格。グロービッシュはイギリス寄り、もしくはフランス語のバイアスがかかってるのかも?

と、ここで思い出した。たしか映画はフランス初、リヨンのリュミエール兄弟じゃなかったっけ?とここでまた調べてみると、世界初の有料の映画上映はフランスのリヨンにて、で(最初の10本の動画はこちら)これよりすこし前にアメリカのエジソンはキネトスコープ、のぞくと映画がみれる装置を発明している。「映画」についてのアメリカ英語とイギリス英語の違いはまるでこの、どっちが世界初?といいたくなるような歴史を反映しているようで面白い。

とまあ、映画ひとつをとっても英語では複数の表現があるわけだけど、1500っていう単語数自体は日本人にとってどれくらいなんだろう?と、次は日本の中学生が学校で学ぶ単語の数を調べてみた。2011年度までは指導する単語数が900語だったのが、2012年度からは1200語になったそうである(V-netクロス vol.29 2010 WINTER)。つまり、グロービッシュの語彙数は現在の日本の中学英語の目指すところより、ちょっとだけ多い。

シンプルな文章構造というのはグロービッシュに限らず、コミュニケーションの基本な気がする。イディオムとジョークはどうだろう。状況と話相手によるような。それと、いったん1500語以上を記憶して、イディオムやジョークを使うようになった英語学習者が、それを意識的にやめるのはむずかしいかもしれない。

ちなみに、グロービッシュ提唱者のジャン=ポール・ネリエール氏は研究者ではなくて、国際的に仕事するビジネスマンである。グロービッシュ自体が世界中の英語学習者を対象にしたビジネス企画な気もするけど、国際語としての英語について考えてみるのは面白い。




2013年2月9日土曜日

映画で語学。study languages with movies

大学の語学の授業のなかで今でも印象に残っているのが、映画『かくも長き不在(Une aussi longue absense)』を教材にしたフランス語の授業である。といっても、この授業でフランス語がすっかり身についた、というわけではなくて、むしろ映画一般に興味を持つようになった。また「英語を話せるようになりたい」と真剣に思うようになったとき、英会話や留学など実際に話してみる機会をもつ以外に映画を使うようになったのも、この授業の影響が大きい。

とにかくどんな授業だったかというと、まず宿題は、映画の脚本の一部を予習する(読んで理解してくる)こと。そして、授業では映画を字幕なしで観る。そして脚本の和訳を試み、先生の解説があり、理解が進んだところでまた映画を観る。その次の回も方法は同じで、同じように映画を観て、脚本を読んで、また映画を観る。

この授業の方法自体は特に目新しいことはない。すなわち、ある場面の会話を音や映像で体験し、その後内容を文章として理解、そしてまたその場面を観る。語学学習によくあるパターンである。でも映画をこんなに細切れにして丁寧に観る、しかも字幕なしで、というのはとても新鮮だった。

で、これを英語の独学に適用しようと思ったときわたしがやってみたのは、
  1. 気に入った映画は何度でも観る(聴く)。
  2. 映画の脚本を精読した後、何度も音読する。
だった。当時は映画と脚本の両方を教材として入手する、なんてことは当時はなかなかできなかったし、なにしろ独学なので、こういう方法にとどまったのだけれど、今はHuluなど便利なサービスがたくさんあるので、比較的簡単に映画を教材として使いやすいのでは、と思う。

とはいえ、この方法はやっぱり、映画好きの人におすすめだ。ちなみに、語学留学前にたっぷり映画を観たわたしは、留学先で映画好きの友達を見つけ、映画の話を楽しんだ。つまり、英語を話す道具というより、会話のネタとしてこの体験は役に立った。

今のわたしは、特に英語を話す必要もないし、そのためか、英会話の学習意欲はない。でも映画の会話をもっと深く味わえるようになれたらいいなあ、とは思う。そして、日本語字幕を読みながら、英語を聴き取って、自分ならどう訳すかなあ?なんて考えるのも結構好きである。また、聴き取れなかったときに、どんな表現だったんだろう?と辞書で調べてみたりすることもあるが、これはそれなりに語学学習になってるのかも。

2013年2月7日木曜日

ゆっくり読むのも悪くない。It's not so bad reading slowly.

昨年中頃から、ちびちびとペーパバックで小説を読んでいる。映画『食べて、祈って、恋をしてicon』の原作、"Eat, Pray, Love: One Woman's Search for Everything Across Italy, India and Indonesia "という本で、著者はElizabeth Gilbertという女性。イタリア、インド、インドネシアへの約一年の旅というか海外滞在を中心に綴ったノンフィクションなのだけれど、内容は全体がこの3つの国に、さらには各国の内容がそれぞれ36の話に分割されている。そう、3×36=108で、除夜の鐘を連想するけど、japa malas(インドの聖地などで人々が身につけているビーズつなぎ)のビーズの数にちなみ、「バランスをとった」そう。

で、現在わたしが読んでるのは106話の地点。正直、読み終わりたくない。半年ほどゆっくり、一日一話以下でなるべく辞書も丁寧にひいて読んできたからか、愛着が湧いてしまったよう。こんなじわっとゆっくりした読書、日本語ではなかなかできない。外国語だからこそ、ゆっくり、もしかしたらより深く読める、というのは別に今初めて知ったことではなくて、大学生の頃、先輩が言ってた言葉だったりするのだけれど、今回しみじみと実感した。

これを読み終わったら、また同じ著者の本を読もうかな、続編もあるし、と考えていたとき、そっかブログとかフェイスブックとかで何か書いてるかもと思いつき、調べてみると著者のwebサイトが。フェイスブックページもあって、いいね!してみたところ、かなり頻繁に情報が送られてくる。ノンフィクションのお話なので、登場人物たちの今が、小説の続きでもあるわけで、そんな「お話の続き」の出来事が文章で、さらには重要登場人物の写真などもみれて(!)嬉しい限り。本を読み終わっても、ある意味、物語を読み終わる心配はなくなった。

この本があって、それを読んでいるわたしがいて、そのことをこのブログに書き綴っているこのことも、この物語の続きのお話ともいえるわけで。こういう読書はいいなあ。

ちなみに、この本を読むにあたり、iphoneにいれた辞書アプリiconが大活躍。読んでるページの別のページにiphoneを置いて、辞書アプリをひく、というのが、どこにいても手軽にできたのがよかったよう。それと、映画→原作本の順に体験できたのも、両方楽しめてよかった。

今のわたしはゆっくりしか英語を読めない。でもだからこそ、オリジナルが英語のものは英語で読んでみるといいのかも。



関連記事 by LinkWithin

Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...