翻訳の勉強をやってみればみるほど思うのは、自分のボキャブラリーは乏しいってこと。辞書をひけばひくほど思うのは、漢字って難しいこと。というか、かなり忘れてて、書けない、読めないっ、キィー!と自分が猿になったかのような(ユアグローの短編の余韻)トホホ感が。
というわけで、日本語を補充してみることにしました。で、何を読もうかと思ったときに出会ったのが、柴田元幸先生のこのアドバイス。
Q.翻訳家を目指す人へのアドバイス好きなものをたくさん読む。これって当たり前な感じもしますが、じゃあさて、どんな文章が好きか、例えば小説だったらどの作家が好き?と自問してみると、難しい。どうも、昨年TOEICの勉強をしようとした時点で更新がとまっています。
日本語でも英語でも、好きなものをたくさん読むことに尽きるのではないでしょうか。好きでもないことを努力しても、言葉については身に付かないと思うので。面白い本を見つけるには、最近はインターネットでずいぶん情報が得られますが、結局もともと自分が興味を持っているものしか見つからない気がする。できれば現地の書店に行って、あまり知られていない良い本を、手に取りながら探すのが理想ですね。(言語をほどき紡ぎなおす者たち───海外文学界の第一線で活躍する翻訳家9名の仕事場を訪ねて vol.1 <柴田元幸/きむふな/野崎歓> - webDICE)
とにかく、よし、読むぞ!と図書館へ行き、いつもチェックしているよしもとばななの棚をチェック。彼女の作品は図書館に入ってない新作をのぞいて、どうやら全部読んでることを確認。石田衣良と山田詠美は、5年ほど前までは好きだったはずが、なんかずれてきた感あり。三浦しをんは『舟を編む』も『神去なあなあ日常』もよかった要注目の作家さん。大事にちょっとずつ読んでいくつもり。池澤夏樹は好みの作家さんで、読んでない新刊がいくつかあることを確認したものの、今は気分じゃないなあ。
で、伊坂幸太郎のところで、ああ、と思いました。この人の小説、大好きなのに、読んでない作品が大量にあります。うーん、どれから読もうか、と迷ってるうちに、エッセイを発見したのでまずはそちらから。『3652―伊坂幸太郎エッセイ集』はなんと、この作家さんの唯一のエッセイなのでした。緻密な構成の小説を書くこの方、実はエッセイは苦手、だそうで、無理矢理書いてる感がファンにはかえってたまりません。
どの小説から読もうか迷うあまり、まずこの人の作品を発行順に並べてみることにして、ブクログでまとめをつくってみました。
伊坂幸太郎の小説
『アヒルと鴨のコインロッカー』を読まずに映画で観てしまったのをのぞくと、内容を知らない作品で一番新しいのは『魔王』です。
一気に読みました。ちなみに、作者もこの作品は一気に書いたそうです。超能力を持った個人と社会、あるいは国家権力のおはなし。時代の空気感を書くのがこの人はほんとうまいなあと思います。
あまりに面白かったので、この作品への他の人のレビューをブクログで読んでいると、『モダンタイムス』が続編にあたるということがわかりました。ので、次は『モダンタイムス』を読みました。最初は図書館の本で。続きはiBooksで。
これも個人と大きな流れの話ですが、時代は近未来。システムをつくってるつもりが、システムに狙われるようになったシステムエンジニアのお話。ちっとも未来な感じがしないなあ、と、ケチをつけつつも、またもや一気読み。図書館で借りればよかったのに借りずに帰って、でも読みたくなって、iBooksを利用してしまいました。多少、残像が残る感じがありましたが、先が知りたくなって、読んでしまいました。連載ものだったからこそ、そういう読み方があっていたのかもしれません。
『モダンタイムス』と同時期に書かれた、そして似たテーマの書き下ろし作品が『ゴールデンスランバー』。首相暗殺の濡れ衣を着せられた男が逃げて逃げて逃げまくるお話、というと、アメリカ映画にありそうなテーマですが、伊坂幸太郎の手にかかると、なにかほんわかと仙台の街のほのぼのとした人間関係の空気感がただよいます。巨大な監視システムの陰謀をかいくぐって個人を助けるのは、学生時代の友情。生身の人と人との信頼関係。味のある人物がたくさん出てきます。ちょっと切ないラストでした。
ああ、面白かった!小説は生きる活力になりますね。
ところで、英語で読む村上春樹、ならぬ、英語で読む伊坂幸太郎、ができたら素敵だなあと、ざっと調べてみたところ、英訳されているのは『ゴールデンスランバー』だけでした。英文版のタイトルは、"Remote Control"となってます。