2013年7月7日日曜日

保留コーヒー、支える珈琲、カフェ・ソスペーゾ? suspended coffee

今週の6 Minute English(BBC Learning English)の話題はナポリからヨーロッパ各地へ、そして世界へと広がりつつあるムーブメント、"Suspended coffee"について。

これは、カフェでコーヒーを注文する際に、自分だけのためでなく、「他の人」の分も注文してお金を払う、というもので、イタリアのナポリに古くからある慣習だそう。ちなみに、イタリア語では、caffè sospeso。

で、6 Minute Englishで、この「他の人」というのは具体的には誰か、いったい誰のためにコーヒーを注文したまま保留に(suspend)しておくのか、というのが詳しく述べられていました。

で、番組でインタビューを受けているカフェの女性の答えは、
  1. homeless
  2. hard on their luck
  3. refugee
の3通り。あえて日本語に訳すなら順に、ホームレス、運の悪い人、難民、になるかと思います。

続いて、BBC Newsで4月に配信された次の動画をみてみると、"Suspended coffee"を導入しているイギリスのお店と利用者の声が紹介されています。



正直、言ってることが全部聴き取れたわけではないのですが、"suspended coffee"を注文する人と受け取る人の様子は、「さりげなく」ごちそうする人とごちそうされる人、という感じ。特に"suspended coffee"を定期的に買ってる眼鏡の男性の感じや発言は、カフェというコミュニティと場所、その利用者さんたちを仲間として大事にしてる感が伝わってきていいなあ、と思いました。

さて。日本にはこれやってるところあるのかしら?そもそも、"suspended coffee"はなんて訳すんだろう、と調べていたら、訳語として「保留コーヒー」という言葉がたくさん出て来て、はじめはちょっと残念な気分。じゃあ、別の翻訳案があるかというと思い浮かばないのですが。

お店とお客の信頼関係に基づくという意味では「ツケ」に似てますが、金銭的負担はお客側の善意というところが違います。一種の「寄付」だけど、BBCの動画の男性はローカルや見知った人を強調してた感があったので、「おごる」とか「ごちそうする」に近いのかも。ただし、さりげなく、です。

そもそもナポリ発だし、ここはイタリア語のカタカナ読み、「カフェ・ソスペーゾ」でいいんじゃない?と、BIG ISSUE ONLINEのカフェ運営者注目のアイデア:「カフェ・ソスペーゾ(保留コーヒー)」を読みながら思いました。この記事では、BIG ISSUEの記事の引用がなかなか素敵だったので、それをさらに引用すると、
その日に何かよいことがあった人は自分のコーヒーだけでなく、もう1杯分コーヒー代を払い、バリスタに「ソスペーゾ!(保留で)」と伝える。それを記録に残しておき、ホームレスまたはお金に困った人が訪れた際には、彼らにコーヒーを無料で提供するという仕組みだ。
日本のカフェでもいっそのこと、カタカナで、「ソスペーゾ!」と言ったら、「エスプレッソ」や「カプチーノ」とも音が(ちょっとだけ)似てるし、さりげなさがあっていいかも。いかがでしょう?

で、日本の導入例はあるのかな、と、日本語の記事を探していたところ、テレビ東京に、
南欧危機で「ツケ払い」復活 コーヒーで支えあいも
という動画がありました。ここでは、「保留コーヒー」だけでなくイタリアでの「ピザのツケ払い」も紹介されています。

またこのテレビ東京の動画には、BBCで登場した「保留コーヒー」利用者のふたりも登場。特に印象的だったのは、「保留コーヒー」を受け取ってる男性がこのカフェのお店の前で露天商をしていること。もしかして、ニュースに取り上げられたことで、お店の注目度も変わってきたのかな?「保留コーヒー」システムは、お店に新しい人をよびこむ効果もありそうな気がします。

一方、greenz.jpでも"suspended coffee"関連の記事が紹介されています。
ホームレスにコーヒーを“予約”する寄付イニシアチブ「Suspended Coffee」に、スターバックスが加入!
この記事では、「保留コーヒー」という言葉は使われず、"suspended coffee"という英単語をそのまま使いつつ、ホームレスにコーヒーを“予約”する寄付イニシアチブと説明。

「予約」というのもちょっと意味合いが違う気が。あと、コーヒーの受取り手をホームレスに限定しちゃってるのも気になるのですが、この英スターバックスの場合は、oasisという特定の慈善団体と提携してるからこういう書き方になったのかも。英スタバのやり方は、場所を共有するというより、コーヒー募金という感じがします。よくもわるくもローカル色が薄まっているといいますか。

「保留コーヒー」は(慣れて来ると、だんだんこの訳語でいい気がしてきました ^ ^;)日経ビジネスオンラインでも紹介されています。
イタリア発、コーヒーとピザで善意の連鎖 英国のスタバも始めた「保留」ムーブメントとは?
イタリア、イギリスの例だけでなく、この記事では、日本の導入例が紹介されていました。北海道夕張市のルーチェ・ソラーレという喫茶店では、「保留コーヒー」を独自に「支える珈琲」と名付けて取り入れているそう。同時に「支えるおにぎり」「支えるピザ」もあるようですが、この活動を支援する人がいることはわかっても、受取り手がいるかについてはよくわかりませんでした。

日本だと地震に津波に洪水大雨など、自然災害があったときに寄付を行い、被災すれば寄付を受け取るというのが日常的な気がしますが、「保留コーヒー」の仕組みがそういった寄付と大きく異なるのは、カフェとコーヒーを通じての「寄付」になるため、コーヒーを飲む人だけでなく、カフェをも応援できるところ。

そうやって、応援したり助けてもらったりなカフェがある生活、ちょっと憧れます。

関連リンク
Suspended Coffees

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