2014年3月27日木曜日

ヘミングウェイの超短編を和訳してみた。 tried to translate very short stories of Hemingway into Japanese.

相変わらず、ちびちびっと『翻訳教室』に取り組んでおります。イタロ・カルヴィーノの『見えない都市』の次の課題はヘミングウェイの短編というか、超短編で、1924年に出版された"in our time"という本からのものだそうで、ヘミングウェイの作品の中でも初期のものです。

内容は戦争中の出来事なのですが、そういうこととは別に、文体というか、文章のスタイルというものの個性がよくわかる英文で、単語や文法、文章の意味がわかっても、この独特のリズムのようなものを日本語にするとどうなるんだろう?という、翻訳の難しさというか、制約と自由を体感できる翻訳体験でした。

ヘミングウェイの短編は、新潮文庫の『ヘミングウェイ全短編(高見浩訳、全3巻)』が好きで読みふけったことがありますが、『翻訳教室』のように、複数の訳を比べる愉しみを知ってしまうと、単に日本語だけなんてもったいないという気持ちになってきます。それにヘミングウェイを訳すのって翻訳初心者のわたしにはいい課題になるかもと、まずは、柴田元幸訳の『こころ朗らなれ、誰もみな』を入手。原文は、"The Complete Short Stories of Earnest Hemingway, the Finca Vigía Edition"を使うことにして、と『翻訳教室』が終わってからの課題をただいま準備中。

それにしても、ヘミングウェイの短編ていろんな人が訳してて、そのこと自体も面白いです。原文読んで、翻訳読んで、「いや、自分だったらこうは訳さないよ」と工夫してみたくなっちゃう、そんな魅力があるんじゃないかしらん?

ちなみにわたくし、大学に入ってすぐの英文の授業の課題は、『老人と海』の英訳でした。当時は「なんで既に訳が出版されてる人の文章を英訳されるんだろう?意味ないじゃん」とか「魚用語が多すぎるよ、難しいよ」と、あまり真面目に取り組みませんでしたけど、今になってみると、受験英語の後にヘミングウェイを読ませてくれた英文の先生に感謝です。


 in our time アーネスト・ヘミングウェイ著 柴田元幸訳

 IN OUR TIME

われらの時代・男だけの世界 (新潮文庫―ヘミングウェイ全短編) われらの時代・男だけの世界 (新潮文庫―ヘミングウェイ全短編) 高見浩訳
勝者に報酬はない・キリマンジャロの雪―ヘミングウェイ全短編〈2〉 (新潮文庫) 勝者に報酬はない・キリマンジャロの雪―ヘミングウェイ全短編〈2〉 (新潮文庫) 高見浩訳
蝶々と戦車・何を見ても何かを思いだす―ヘミングウェイ全短編〈3〉 (新潮文庫) 蝶々と戦車・何を見ても何かを思いだす―ヘミングウェイ全短編〈3〉 (新潮文庫) 高見浩訳

こころ朗らなれ、誰もみな (柴田元幸翻訳叢書) こころ朗らなれ、誰もみな (柴田元幸翻訳叢書)

The Complete Short Stories Of Ernest Hemingway: The Finca Vigia Edition The Complete Short Stories Of Ernest Hemingway: The Finca Vigia Edition

2014年3月20日木曜日

イタロ・カルヴィーノ『見えない都市』英訳版を訳してみた。 tried to translate the English version of "Invisible Cities" by Italo Calvino into Japanese

翻訳を学ぼうと『翻訳教室』の課題を淡々とこなしていますが、なかなか進みません。特に今回の課題、『見えない都市』の一節はこれぞ文学という感じで難しく、知ってるつもりの単語でも辞書をすみずみまで確認して慎重に読み進めました。なんかもう、翻訳ってやっぱり英語と日本語、両方との戦いなんだなあ、というのを実感。とにかくたらたらっと長くてわかりにくい文体で暗い内容です。柴田先生は、
ストーリーでぐんぐん読ませる小説ではないので、読んでいて眠くなります。なかなか一気に通読できません。でも、この小説が誘発する眠気は大変上等な眠気だと思う。枕元に置いて、毎日少しずつ読むと、じわじわ効いてくる。そういう小説ですね。(p.195)
と語っていますが、翻訳修行中のわたしにとっては眠気というよりも強風に立ち向かいながらじわりじわりと歩く感じの翻訳作業でした。はあ。

そもそもこの作品の原文はイタリア語で書かれていて、それを英訳した文章をさらに日本語に訳す作業だったので、もしかするとそんな翻訳文特有の難しさもあったのでしょうか。日本語で書かれていても翻訳文学はなんだか読みにくい、そんな感じが英語でもあるのかなと思ったり。

ともあれ内容はというと、新しい土地で見かける人みんながこれまで知っている人、それも死んだ人にみえて、ついにはここってあの世?自分も死んだのだろうか?、と主人公が思い始めるという暗い内容です。ついこの間『ロード・オブ・ザ・リング』を観たわたしの脳内には、かなりリアルにCGの幽霊だとか、霧におおわれた暗い水辺が思い浮かびました。

でもって、翻訳ってやっぱりただ英文を読むよりもずっと深く文章の世界にはいれるなあということ、そして独特の翻訳モードというか、英文を見ると自動的に日本文を紡ごうとする感じ、がちょっとつかめてきた感があります。

そしてわたしの場合、この「翻訳モード」は英英モードというか、英語で英語を理解する感じとは相容れないらしく、最近どんどん英語のリスニング力が落ちてきたような気がしますが特に生活上支障はないので気にしないことにします。

英語の勉強といっても、いろいろありますね、ほんと。


Invisible Cities (Vintage Classics)

見えない都市 (河出文庫)

2014年3月10日月曜日

"The Lord of the Rings" を iBooksで。

先週末はどっぶりと映画、ロード・オブ・ザ・リングス三部作を観て感動。瀬田貞二の日本語訳版を子供の頃夢中で読んだ記憶は残っているものの、いい感じにディテールを忘れていたのが幸いして素直に物語世界に入り込みました。ストーリーはもちろんのこと、それにしてもよくもここまでつくりこんだなあという感動もあり、世界中にいるであろうこの物語のファン層の厚みを感じたのでありました。

で、観終わった後はもいっかい原作を読もうかと瀬田貞二版をすこし読みなおしてみたのですが、違和感が。映画だと言葉は字幕の短めの日本語を読みながら、会話中心の英語を聴く事になるからか、この日本語訳よりもずっとさっぱりした印象が脳内に残っていて変な感じ。気持ち悪いので英語で読みたくなって、で、amazonであれこれみてると版がたくさんあって迷います。それにこの話って、うちにある日本語訳版でもハードカバー6冊セットとかなりのボリューム。

じゃあ電子書籍かあ、でもKindle端末買うまでじゃあないし、iBooksでちらっとみれたらいいなあ、とはじめはiphoneでサンプルを読んでみたのですが、もっと大画面でも読みたい、と、MacOSをMavericksにアップグレードして読み始めたところ、なかなかいい感じ。

英文科卒でもなんでもないわたしは英語を文学的に味わうっていう感じ、ほとんど経験ないのですが、トールキンの英語ってさっぱりと音がきれいな印象。詩人も目指してた人だから特にそうなのかな?

トールキンは英国人ですが、世界の多くの人に愛されてるこの物語は一種、共通語的なところもあるのかも。書かれたのは50年以上前ですから古いといえば古いのですが、どっぷり読んでみるのもいい勉強になりそう、よしこの際翻訳版と見比べながら丁寧に辞書をひいて読もう、と超スローリーディング(かなり翻訳モードだけど翻訳まではしない)をやってみることにしました。

好きなお話なので時間はたっぷりかける予定。といってもそもそも長いし、トールキンも20年かかって書いてるようですから、そういうのがぴったりな物語なのかもしれません。

ところで、今のところiBooksが便利なのは、iphoneとMBPをこまめに同期してくれるところ。メモがたくさん書けるところ。背景の色が変えられるところ。一方で不満なのは、やっぱりiphoneやMBPの画面はぴかぴかして読みにくい、眼が疲れるような気がするところ。

でもこの大作がiphoneで持ち歩けるなんて、感激。でもタプレットで読みたくもなりそう。やばいやばい。笑


著者 :
ワーナー・ホーム・ビデオ
発売日 : 2014-02-19




The Lord of the Rings: The Fellowship of the Ring, The Two Towers, The Return of the King

2014年3月7日金曜日

『指輪物語』の言語 The languages of "The Lord of the Rings"


『指輪物語』と『ホビットの冒険』は子供の頃夢中になって読んだファンタジー物語。思い入れが強いだけに映画観るとがっかりするかも、とも思いつつ、SHERLOCK(シャーロック)のワトソン役、マーティン・フリーマンが主役だし、それなりに楽しめるかも、とiTunesで観てみました。

で、どうだったかというと、はあ、素晴らしい映像体験でした。本で読んだ時もある程度は頭の中で映像化してるわけですが、あそこまでくっきり、美しさも醜さも鮮明に描かれてしまうとは、と圧倒される世界。魔法使いやらドワーフやらエルフやら架空の種族もリアル。

しかも種の区別は言語にまでおよび、エルフ語というのをエルフや魔法使いが話しています。特別な文字もあり、なんだこれは?と映画を観終わってからwikipediaで調べてみると、原作『ホビットの冒険』の作者、J・R・R・トールキンの著作について、こんな記述が。
最初の文学的野心は詩人になることだったが、若い頃の第一の創作欲は架空言語の創造だった。それらは後でクウェンヤとシンダール語に発展するエルフ語の初期の形態を含んでいた。 言語がそれを話す民族を指し示し、民族が言語の様式と視点を反映する物語を明らかにすると信じて、(この名前が紛らわしいと考えるようになったのでいくらか後悔することになるが)後にエルフと呼ぶようになった伝説の妖精についての神話と物語を書き始めた(英語で書いたが、かれの創造した言語の多くの名前や用語を含んでいた)。
また言語については、次のような記述が。
文献学、言語に関する研究は特に熱心に取り組んだ学問であり、それが高じて約15の人工言語を発明するにいたった。中でも二つのエルフ語、すなわち「クウェンヤ」と「シンダール語」は特に有名である。彼はこれらの言語が誕生した背景として、中つ国の詳細な宇宙論や歴史を創り上げた。
だそうで。 ひゃあ。トールキンさんてば、物語に登場する民族独自の言語までつくちゃってて、映画で採用できてしまうほどの完成度ってこと?

とまあ、映画をきっかけに『指輪物語』の壮大かつ緻密な世界を体験してぞくぞくしたのでありました。

そしてなんだか、wikipediaってトールキン関連の情報がものすごく充実しているのだなあ、アツいファンがたくさんいるのだろうなあ、とこの架空な物語のリアルな存在感に驚いたのでありました。

クウェンヤやシンダール語を学ぼうとは思わないけど、学びたい人のための素材はネット上にたくさんありそうです。

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