2013年6月7日金曜日

トルコのデモ Turkey protests

ここ一週間、BBC NewsとFrance24のトップページに常に続報が出て、BBC Learning Englishの"Words in the News"にも取り上げられていたニュースはトルコのデモ。といっても、当初は、何のデモなのか、争点が何なのかよくわかりませんでした。6月3日のBBC Learning Englishでもタイトルは、
Turkey Protests
ですから、争点が何なのかわかりません。

わたしとしてはまず、1)何に反対してるのか?、2)BBCもFrance24もなぜこのニュースを熱心にとりあげるのか?、が気になって出来るだけニュースを追いかけてみることにしました。まず、Words in the Newsの文章は、
Erdogan has insisted that a controversial plan to redevelop Gezi Park in Istanbul, the issue which sparked the initial protests on Friday, will still go ahead.
で終わってます。そう、イスタンブール(Istanbul)のゲジ公園(Genzi Park)の再開発(redevelop)計画が最初の争点で、首相はこれを押し進めようとしたところ、反対行動を起こす人たちがでてきた、これが一週間前の出来事。

Words in the Newsの短い文章はたいてい、もっと長いBBC Newsとリンクしているので、そちら(Turkey protests: Clashes rage in Istanbul's Besiktas)を読んでみると、デモをしてる側の人たちの気持ちについて、こんなことが書かれていました。
They fear Prime Minister Recep Tayyip Erdogan's Justice and Development Party (AKP) is trying to impose conservative Islamic values on the officially secular country and infringe on their personal freedoms, correspondents say.
secular”は「世俗主義」などと訳される単語ですが、わたしにはこれだけでは何のことかよくわからず、んー、もうちょっとトルコを実感したいなあ、と図書館で見つけたトルコ滞在記的な本、遠山敦子著『トルコ世紀のはざまで』(2001)を読みはじめました。

まだはじめのほうしか読んでませんが、トルコの建国の理念について、ちょっとだけわかったので紹介すると、
1923年新しく共和国を建国するにあたり、ケマルが最も力を入れたのが、民主国家の建設であり、政治と宗教の分離による世俗国家の現出であった。
 それは、イスラーム圏の国では、実現することが最も困難な制度であった。なぜならイスラームの歴史において、政治の指導者と宗教の権威者とは不即不離であると考えられてきたからだ。宗教の法が社会を律する、というのがイスラーム社会の歴史においては基本であった。いまだにイスラーム社会であることと政教を分離することのふたつを両立させ、政教分離を明確に国家理念の柱とした国はトルコのほかにない。(p.39-40)
つまり、世俗主義(secularism)は現在のトルコの建国の理念であり、イスラム社会においては希有な個性ともいえそう。さらにちょっと古いものの、在トルコ共和国日本国大使を務めた遠山さんが書いたこの本によれば、トルコ国民の実に99%がイスラム教徒だそう。この世俗主義のおかげで、信仰は個人の問題となり、例えばラマダンを行うかどうかも個人の自由。

と、世俗主義を大事にする国、トルコ、と頭に置きつつBBC Newsの文章を読み直してみると、エルドアン(Drdogan)首相は政教分離と個人の自由をくつがえしてしまうかもしれない、脅威的存在に思えてきます。

BBCの記事によれば、6月2日までのこのデモの時間的経緯は以下です。
28 May: Small group of people attempt to block the removal of trees in Gezi Park, Istanbul. Police use tear gas and the cutting goes ahead.

29 May: Crowds in the park grow, some setting up camp.

31 May: Police move in to evict protesters, using tear gas and water cannon. Several people are injured. Protests against the police response break out in Izmir, Ankara and elsewhere. The interior ministry promises to investigate.

1 June: Tens of thousands converge on Istanbul's Taksim Square. PM Erdogan condemns the protests and vows development will go ahead. Numbers in the square later swell as the police pull out.

2 June: Protests continue in several towns and cities. Mr Erdogan condemns the "plunderers", but says a mosque will be built in the square.
最初はほんと、公園の樹を切ろうとする人たちと、それを止めようとする人たちの争いだったもよう。そこに、催涙ガス(tear gas)を使ったのがそもそもの間違いで、怒りを感じる人々が出て来ても仕方ありません。公園に人がさらに集まり、キャンプする人たちもでてくる一方で、警察側は高圧放水砲(water cannon)を使用。5月31日には各地に飛び火して「反首相」「反政府」デモの色彩を帯びてきました。

トルコは地理的、思想的(世俗主義)にも、アジアとヨーロッパの架け橋のような国。2020年のオリンピック招致も目指しているし、現在内戦中のシリアとも隣接。そのあたりが、BBCやFrance24などのメディアにさかんに取り上げられる理由?

ちなみに、6月5日の朝日新聞には、同志社大学でイスラム地域を研究している内藤正典教授のコメントが掲載されてました。一部引用すると
今回の暴動は、イスラム色を強めている政権に対する抵抗という面は確かにあるが、市民の声に耳を貸さず権力にしがみつくエルドアン首相個人に対する反発が一番大きな原因だ。首相を批判しているのは、世俗派だけでなく敬虔なイスラム教徒も含まれている。
デモの発端となった公園の開発では、首相を取り巻く政商の利権が絡むと予想され、人々はそれに強く反発した。
すでにこのデモ関連と思われる死者も出ているようですが、どうか平和的に解決しますように。

デモは人数や行動で「何かに反対している」ことを示すのには有効だけど、「何に反対してるのか」を明確に示すのは時に難しい、ということを考えさせられたニュースでした。




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