2013年3月31日日曜日

洋画の原題と邦題 the original titles of foreign films, compared to their japanese versions

外国の映画の日本語タイトルは必ずしも、原題の日本語訳とは限りません。この記事ではわたしが最近みた映画を紹介しつつ、原題と邦題を比較してみようかと思います。

運動靴と赤い金魚 運動靴と赤い金魚(字幕版)

まずは昨日、itunesで観たばかりのイラン映画『運動靴と赤い金魚』。原題はペルシャ語で、"بچه‌های آسمان‎"だそうですが、ペルシャ語が全くわからない私にはこのままでは意味不明なため、Google翻訳にかけて日本語訳してみました。結果は「天国の子供たち」。で、この訳はどうなの?と念のため、この映画の英語タイトルをチェックしてみると、"Childeren of Heaven"、フランス語タイトルは"les enfants du ciel"となってますから、おそらく「天国の子供たち」が原題の直訳として妥当なのでは、と思われます。

でも。日本語で「天国の子供たち」なんて言ったら、子供たちが亡くなる話か、もう亡くなってしまった子供のお話を想像しますが、この映画の子供たちは元気です。いやむしろ、元気いっぱい、走り回りまわる、その姿、特に足元をカメラが追いかける、そんな映画。あ、イランも靴をぬぐ文化なんだなあ、と再確認する日本人は少なくないかも。そして池に金魚、しかも和金がいて、なかなかの役者ぶり。邦題のなかの「運動靴」はこの映画の重要アイテムですし、「赤い金魚」は異国であるイランをぐっと身近に感じさせてくれる存在。というわけで、この邦題は、「イラン映画観てみない?意外と日本と共通点あるんだよ、でちょっとなつかしい感じの映画なんだあ」と、誘ってくれてるような感じがして、とても好きです。

で、原題に戻ってみると、うーん、やっぱりわかりません。「子供たち」の映画ですが、「天国」のイメージが日本とイスラム・キリスト教圏(と、強引にまとめてみた)では違うのでしょうか。英語タイトルにある"heaven"には「たいへん幸せな状態」や「楽園」(by weblio)って意味もあるから、「幸せな子供たち」とか「楽園の子供たち」あたりが原題に込められた意味なのかな?あるいは、フランス語タイトルだと"ciel"ってなってますが、これは「空」「天国」(by 『クラウン仏和辞典』)という意味で…、ああ、これだとまた子供たちが亡くなってしまいます…。んー、ちょっと苦しいですが、"être au ciel"には口語で、「天にも昇る気持ちである、最高に幸せである」(by 『ロベール仏和大辞典』)という意味もあります。ここから推測して訳すと、英語とフランス語、ペルシャ語タイトルの意味するところは「幸せな子供たち」なのかも。たしかにこの映画、「幸せって何?」って考えさせる内容です。原題はストレートに映画のテーマを示してるのかもしれません。


『運動靴と赤い金魚』予告編


エリン・ブロコビッチ エリン・ブロコビッチ (字幕版)

さて、次の映画はhuluで観たアメリカ映画で、邦題が『エリン・ブロコビッチ』、原題は"Erin Brockovich"。英語をカタカナ化したパターンのタイトルといえばそれはそうなんですが、こうした人名の場合、"Erin"を「エリン」に、"Brockovich"を「ブロコビッチ」に訳した前例がある場合、それに従うのが結構大切かも。ちなみに、原題をGoogle翻訳さんにかけるとばっちりこの邦題にしてくれますが、逆に、邦題をGoogle翻訳さんで英訳しても、原題になります(!)が、こうしたことを可能にするためにも、外国人名の日本語カタカナ表記は一定のルールというか、用例の蓄積が必要といえそう。

ところで、人名がタイトルになってる場合って、その人物が実在のことが多いのかも。この映画の主人公は実在の人物で、映画にも登場します。環境汚染の告発という暗く深刻になってもおかしくない内容を、一人の女性の痛快なサクセス・ストーリーとして描いたお話です。残念ながらhuluでは英語字幕はでないのですが、英語スクリプトとその日本語解説をした本が、スクリーンプレイ社から出版されています。

エリン・ブロコビッチ (名作映画完全セリフ集―スクリーンプレイ・シリーズ)

英語での環境用語や法律用語を学ぶにもいい映画かもしれません。



地球にやさしい生活 地球にやさしい生活(字幕版)

次はitunesで観たアメリカのドキュメンタリー映画。邦題は『地球にやさしい生活』で、原題は"No Impact Man"です。"no"も"impact"も"man"も、日本人にとってはなじみ深い英単語すぎるというか、どれもカタカナ化すると日本語なりの意味を持っていますから、「ノーインパクトマン」なんてタイトルにしたら、インパクトがない男=印象が薄い男、なんて意味にとられるかも。が、これは家族の物語。

この映画の中には、"ecological impact(生態的影響)"という言葉がたくさん登場します。いわゆる「環境への影響」っていう場合にこの、"impact"っていう単語を使うんだ、ということを私はこの映画ではじめて知りました。ちなみに、『ロングマン英和辞典』で、この単語を調べてみると、w2(書き言葉でよく使われる2000語のうちのひとつ)に分類されていて、意味は
impact
  1. (出来事・状況などの)強い影響(力), インパクト
  2. 衝撃
  3. 衝突の瞬間
と、あります。つまり、「影響」という意味で使われることが最も多い単語で、この意味での用例として、紹介されているのが、
the impact of pollution on our climate 汚染が気候に及ぼす影響
と、たまたまかもしれませんが、環境問題関連の言葉。

この原題の日本語訳は、直訳だと「影響しない男」になりますが、映画の内容から考えると、"No Impact Man"の意味するところは、”No (Ecological) Impact Man”で、その直訳は「(環境に)影響しない男」なのかも。で、邦題は、"no ecological impact"のところを、「地球にやさしい」にして生かしたものと思われますが、このフレーズ、商品の宣伝などでよく耳にする、ちょっと浮ついた感じというか、表面的な感じもあるのが、この映画の場合は内容的にとてもしっくりきます。というのは、この映画の主人公とその家族は、特に環境問題に詳しいわけでもない普通のニュヨーカーたちで、環境負荷の少ない生活を1年、とにかくやってみる、と宣言して、やってみながら学ぶというか、はじめから妙に専門的になっていないから。

とまあ、自分もちょっと、家族と環境、「地球」のため?に、生活に工夫を、と思わせてくれる映画でした。そういう意味では社会的インパクトのある映画であり、生活実験なので、"a big social impact"って意味も含んだ原題なのかも…。


『地球にやさしい生活』予告編


関連リンク
運動靴と赤い金魚 - Wikipedia
エリン・ブロコビッチ (映画) - Wikipedia
地球にやさしい生活 - Wikipedia

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