2013年7月2日火曜日

松澤喜好『英語耳』

フォニックス(phonics)はもともと、英語圏の子供のためのもの。つまり、英語が聴けて、話せる子供が、読み書きを学ぶためのもの。それを日本人が使う場合に大きく異なるのが、英語を聴き、話す経験の量が圧倒的に少ないということと、そもそも英語の音についての感覚が違うのかも。

ここしばらく、ひさびさにどっぷりと発音記号に向き合い、英語の音と日本語の音の違いについてあれこれ考えるなかで、一番わたしの疑問に答えてくれたのが、英語耳さんというサイトの、発音バイエルでした(旧英語耳さんのサイトのメニューの中にあります)。そう、「バイエル」なんて言葉を使ってるのは、発音は練習につきる、という、ある意味ピアノの練習的な視点で発音を解説し、練習問題が出してあるから。

で、このサイトに足しげく通ううちに、もう既に発音バイエルは書籍化され、さらには改訂版まで出ていることを知り、入手してみました。やっぱり本のほうが(編集してある分)見やすいし、CDで音がついてるのは便利です。そして英語のひとつの音について、数ページを費やしてる本ってなかなかないのでは、と感激しつつ発音バイエルの練習、はじめました。

歌や楽器に親しんでいる人ならこの感覚よくわかるんじゃないかと思いますが、やっぱり自分で音を出してみると、他の人の音の聴き方は違ってくるんじゃないかと思います。わたしの場合、子供の頃、習いに行かせてもらってたピアノは今でも特別な楽器で、聴いている時の感じが他の楽器や歌とは全然違う気がするのですが、これはもしかすると、言語の発音にもあてはまるのかも。発音の基礎練習は、まずピアノのキーを押す練習、単語の発音は、短いメロディを弾く練習に似てるんじゃないかと。もっとも、この本の著者、松澤喜好さんによれば、英語の子音の発音はフルートなどの管楽器の演奏と似ているそうですが。

ところで、発音についてこんなに細かに認識し考察し指導までできてしまう人って、いったいどんな感覚と経験の持ち主なんだろう?という疑問も浮かびつつあったのですが、この本では著者の英語学習歴がコラム風に紹介されています。で、その中で、あ、やっぱりこの人は特別だ!、と思ったのが、
私が英語をはじめたのは、同級生と同じ中学の時からです。ただし他の人と少し違っていたのは中学・高校時代に洋楽100曲以上の歌詞を暗記して歌えるようになったことでした。(p.25)
の部分。なんでも、気に入った歌は歌えるようになるまで何回も再生してカタカナで書き取っていた、とのこと。まだ頭のやわらかい時にものすごく熱心に英語を聴き、発音した方なんですね。すごいなー、と感心。

正直、わたしはそこまで、「ネイティブみたいに発音したい」とか「きちんと聴き取りたい」と思ったことはなく、どちらかというと「そんなに発音がんばらなくても、日本人は世界的にそこそこいるし、インターネットでも存在感あるみたいだし、日本人英語っていう言語というか英語のサブグループをつくってもいいんじゃないかしら。」と思ってるほうなんですが、今はものすごく、「外国語で何言ってるかわかるようになるプロセスってどうなってるんだろう?」ということに興味があり、英語耳をつくるべく発音練習、してみることにしました。

そう、たぶんこれ、心理言語学的興味です。今すぐに英語を使わなくてもいいからこそのちょっとした実験とでもいいますか。発音ができると、リスニングができるようになる、の?

英語耳[改訂・新CD版] 発音ができるとリスニングができる 松澤喜好

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