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2014年3月20日木曜日

イタロ・カルヴィーノ『見えない都市』英訳版を訳してみた。 tried to translate the English version of "Invisible Cities" by Italo Calvino into Japanese

翻訳を学ぼうと『翻訳教室』の課題を淡々とこなしていますが、なかなか進みません。特に今回の課題、『見えない都市』の一節はこれぞ文学という感じで難しく、知ってるつもりの単語でも辞書をすみずみまで確認して慎重に読み進めました。なんかもう、翻訳ってやっぱり英語と日本語、両方との戦いなんだなあ、というのを実感。とにかくたらたらっと長くてわかりにくい文体で暗い内容です。柴田先生は、
ストーリーでぐんぐん読ませる小説ではないので、読んでいて眠くなります。なかなか一気に通読できません。でも、この小説が誘発する眠気は大変上等な眠気だと思う。枕元に置いて、毎日少しずつ読むと、じわじわ効いてくる。そういう小説ですね。(p.195)
と語っていますが、翻訳修行中のわたしにとっては眠気というよりも強風に立ち向かいながらじわりじわりと歩く感じの翻訳作業でした。はあ。

そもそもこの作品の原文はイタリア語で書かれていて、それを英訳した文章をさらに日本語に訳す作業だったので、もしかするとそんな翻訳文特有の難しさもあったのでしょうか。日本語で書かれていても翻訳文学はなんだか読みにくい、そんな感じが英語でもあるのかなと思ったり。

ともあれ内容はというと、新しい土地で見かける人みんながこれまで知っている人、それも死んだ人にみえて、ついにはここってあの世?自分も死んだのだろうか?、と主人公が思い始めるという暗い内容です。ついこの間『ロード・オブ・ザ・リング』を観たわたしの脳内には、かなりリアルにCGの幽霊だとか、霧におおわれた暗い水辺が思い浮かびました。

でもって、翻訳ってやっぱりただ英文を読むよりもずっと深く文章の世界にはいれるなあということ、そして独特の翻訳モードというか、英文を見ると自動的に日本文を紡ごうとする感じ、がちょっとつかめてきた感があります。

そしてわたしの場合、この「翻訳モード」は英英モードというか、英語で英語を理解する感じとは相容れないらしく、最近どんどん英語のリスニング力が落ちてきたような気がしますが特に生活上支障はないので気にしないことにします。

英語の勉強といっても、いろいろありますね、ほんと。


Invisible Cities (Vintage Classics)

見えない都市 (河出文庫)

2013年9月27日金曜日

イタリア人は手で話す? Do Italians talk with hands?

最近、家での珈琲、特に朝の一杯目の珈琲を丁寧めに淹れるようになりました。たった一杯でも丁寧に淹れると味も香りも違うし、お湯を沸かす瞬間からちょっとした目覚めの儀式みたいになってます。

そんな中、よく思い出すのが、約20年前、イギリス、オックスフォードのとある語学学校の女子寮に滞在してた頃の日曜日の朝の時間。学校は休みなので、各自思い思いの時間に起きて来てくるのですが、たいていドイツ人とドイツ系スイス人は早起き。その次はイタリア人、その後がスペインとフランス人だったかな?たぶん、10人以上いたはずですが、キッチンをシェアしてても混雑が起きることはなく、だいたい同じ時間帯は同じメンバーで珈琲をすすりながらおしゃべりしてました。

で、ほとんどの人がキッチンに置いてあったインスタント珈琲を飲む中、イタリア人の女性だけは、必ずエスプレッソメーカーを使ってました。当時のヨーロッパは不景気(recession)で、女子寮の学生たちもみんななるべく自炊して倹約し、英語を学んでいたわけですが、彼女にとってはこの朝の珈琲はゆずれないもの、人権に等しかったのかも。と、保留コーヒーのことを知った今は思います。

そしてこのイタリア人女性は、ほんと、会話上手で、日曜日の朝にキッチンで彼女の話をきいて、涙が出るほど笑ったのを覚えてます。彼女はボキャブラリーが豊富なわけでも、英語が上手なわけではなく、学校のクラスも、初級に近いレベルに分類されてましたけど、彼女が話だすと何かパーッと話の景色がみえて、それをその場のみんなが共有して大笑い。

イタリア人は手で話すってきいたことありますけど、たしかに彼女は手を使い、というかもう、身体全体で話してました。そしてさらに声が明るくて、と、あの日曜の朝の時間はわたしにとって、かけがえのない思い出になってます。

そして、あの女子寮のことを思い出すと、世界の人々とコミュニケーションするのに必要なのは語学力だけじゃないんだなあ、としみじみ思います。だって、あそこにいた様々な国の人たちの英語は英語としては不完全だったわけで。それでも一緒に生活できてたし、たくさん話をしたし、仲良くなっていい時間を過ごせたし。

当時のわたしは「英語はイギリス人から学ばないと!」なんて固定観念にしばられてましたけど、世界の共通語として英語を選ぶような場合はむしろ、イタリア人の陽気さや手の動き、スペイン人の歌、ブラジル人の踊り、ドイツ人やスイス人の几帳面さ、アフリカ人のおおらかさ、などなど、多様性とセットになった環境で英語を学べたのがなんとも貴重な経験でした。

ちなみに日本人であるわたしはというと、あのキッチンではもっぱら聞き役でした。でもそういえば、親子どんぶりを作って食べてたらみんながよってきて、いい香りだね、美味しいね、って食べてたような記憶が。日本人はというか少なくともわたしの場合、会話そのものよりも、何か作っちゃってコミュニュケーションするタイプなのかもしれません。

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2013年7月7日日曜日

保留コーヒー、支える珈琲、カフェ・ソスペーゾ? suspended coffee

今週の6 Minute English(BBC Learning English)の話題はナポリからヨーロッパ各地へ、そして世界へと広がりつつあるムーブメント、"Suspended coffee"について。

これは、カフェでコーヒーを注文する際に、自分だけのためでなく、「他の人」の分も注文してお金を払う、というもので、イタリアのナポリに古くからある慣習だそう。ちなみに、イタリア語では、caffè sospeso。

で、6 Minute Englishで、この「他の人」というのは具体的には誰か、いったい誰のためにコーヒーを注文したまま保留に(suspend)しておくのか、というのが詳しく述べられていました。

で、番組でインタビューを受けているカフェの女性の答えは、
  1. homeless
  2. hard on their luck
  3. refugee
の3通り。あえて日本語に訳すなら順に、ホームレス、運の悪い人、難民、になるかと思います。

続いて、BBC Newsで4月に配信された次の動画をみてみると、"Suspended coffee"を導入しているイギリスのお店と利用者の声が紹介されています。



正直、言ってることが全部聴き取れたわけではないのですが、"suspended coffee"を注文する人と受け取る人の様子は、「さりげなく」ごちそうする人とごちそうされる人、という感じ。特に"suspended coffee"を定期的に買ってる眼鏡の男性の感じや発言は、カフェというコミュニティと場所、その利用者さんたちを仲間として大事にしてる感が伝わってきていいなあ、と思いました。

さて。日本にはこれやってるところあるのかしら?そもそも、"suspended coffee"はなんて訳すんだろう、と調べていたら、訳語として「保留コーヒー」という言葉がたくさん出て来て、はじめはちょっと残念な気分。じゃあ、別の翻訳案があるかというと思い浮かばないのですが。

お店とお客の信頼関係に基づくという意味では「ツケ」に似てますが、金銭的負担はお客側の善意というところが違います。一種の「寄付」だけど、BBCの動画の男性はローカルや見知った人を強調してた感があったので、「おごる」とか「ごちそうする」に近いのかも。ただし、さりげなく、です。

そもそもナポリ発だし、ここはイタリア語のカタカナ読み、「カフェ・ソスペーゾ」でいいんじゃない?と、BIG ISSUE ONLINEのカフェ運営者注目のアイデア:「カフェ・ソスペーゾ(保留コーヒー)」を読みながら思いました。この記事では、BIG ISSUEの記事の引用がなかなか素敵だったので、それをさらに引用すると、
その日に何かよいことがあった人は自分のコーヒーだけでなく、もう1杯分コーヒー代を払い、バリスタに「ソスペーゾ!(保留で)」と伝える。それを記録に残しておき、ホームレスまたはお金に困った人が訪れた際には、彼らにコーヒーを無料で提供するという仕組みだ。
日本のカフェでもいっそのこと、カタカナで、「ソスペーゾ!」と言ったら、「エスプレッソ」や「カプチーノ」とも音が(ちょっとだけ)似てるし、さりげなさがあっていいかも。いかがでしょう?

で、日本の導入例はあるのかな、と、日本語の記事を探していたところ、テレビ東京に、
南欧危機で「ツケ払い」復活 コーヒーで支えあいも
という動画がありました。ここでは、「保留コーヒー」だけでなくイタリアでの「ピザのツケ払い」も紹介されています。

またこのテレビ東京の動画には、BBCで登場した「保留コーヒー」利用者のふたりも登場。特に印象的だったのは、「保留コーヒー」を受け取ってる男性がこのカフェのお店の前で露天商をしていること。もしかして、ニュースに取り上げられたことで、お店の注目度も変わってきたのかな?「保留コーヒー」システムは、お店に新しい人をよびこむ効果もありそうな気がします。

一方、greenz.jpでも"suspended coffee"関連の記事が紹介されています。
ホームレスにコーヒーを“予約”する寄付イニシアチブ「Suspended Coffee」に、スターバックスが加入!
この記事では、「保留コーヒー」という言葉は使われず、"suspended coffee"という英単語をそのまま使いつつ、ホームレスにコーヒーを“予約”する寄付イニシアチブと説明。

「予約」というのもちょっと意味合いが違う気が。あと、コーヒーの受取り手をホームレスに限定しちゃってるのも気になるのですが、この英スターバックスの場合は、oasisという特定の慈善団体と提携してるからこういう書き方になったのかも。英スタバのやり方は、場所を共有するというより、コーヒー募金という感じがします。よくもわるくもローカル色が薄まっているといいますか。

「保留コーヒー」は(慣れて来ると、だんだんこの訳語でいい気がしてきました ^ ^;)日経ビジネスオンラインでも紹介されています。
イタリア発、コーヒーとピザで善意の連鎖 英国のスタバも始めた「保留」ムーブメントとは?
イタリア、イギリスの例だけでなく、この記事では、日本の導入例が紹介されていました。北海道夕張市のルーチェ・ソラーレという喫茶店では、「保留コーヒー」を独自に「支える珈琲」と名付けて取り入れているそう。同時に「支えるおにぎり」「支えるピザ」もあるようですが、この活動を支援する人がいることはわかっても、受取り手がいるかについてはよくわかりませんでした。

日本だと地震に津波に洪水大雨など、自然災害があったときに寄付を行い、被災すれば寄付を受け取るというのが日常的な気がしますが、「保留コーヒー」の仕組みがそういった寄付と大きく異なるのは、カフェとコーヒーを通じての「寄付」になるため、コーヒーを飲む人だけでなく、カフェをも応援できるところ。

そうやって、応援したり助けてもらったりなカフェがある生活、ちょっと憧れます。

関連リンク
Suspended Coffees

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